プラハ在住会員からの現地便り

  

column #3

 プラハの師走

  

column #2 ヘルシーライフ in CZ に戻る    column #4 プラハのクリスマス に進む

  

 クリスマスが目前に迫り、年々過熱しつつあるプラハのクリスマス商戦も大詰めを迎えている。週末の大型ショッピングセンターはクリスマスプレゼントを買い求める人で溢れ、チェコの落ち着いた伝統的なクリスマスキャロルよりも高らかに流れるアップテンポな英語のクリスマスソングが人々の購買意欲を煽っているようにも思える。毎年この時期になるとチェコの新聞には「今年子供たちが欲しいプレゼントは?」というアンケート記事が載るが、携帯電話を欲しがる子供が多いことに驚かなくなって、もう久しい。このような光景はここがチェコなのか日本なのかを分からなくしてしまう。と、このように書いている私だが、クリスマスの商業的部分を否定するつもりは全くない。結局チェコ人はクリスマスの買い物よりも、クリスマスの本来の姿(伝統)の方をずっと大事にしているのだから。

 さて、クリスマスイブに鯉のフライとポテトサラダを食べることなど、チェコのクリスマスの伝統については、様々なメディアや書籍からご存知の方も多いと想像するので、ここでそれについて改めて述べるのはやめて、今回はプラハの年末の風景を少し視点を変えて紹介してみたい。

12月に入ると、各テレビ局がクリスマスにどんな番組を放送するかが話題になる。日本でお正月番組が話題になるのとよく似ている。チェコのクリスマス番組と言えば、pohádka(おとぎ話)である。この場合、おとぎ話映画になるわけだが、このジャンルはチェコでは老若男女問わず、驚くほど人気がある。これは近頃日本でチェコアニメと呼ばれているものとは違う。まずアニメーションではなく実写である。この種の映画はもちろん一年を通じてテレビで放送されているのだが、クリスマスに決まって放送される作品というのがあるのだ。チェコ版シンデレラもその一つだが、チェコの人たちは去年も一昨年もいやもう何十年も同じものを見ているのに、今年も楽しみに見るのである。70〜80年代に作られた既にクラシックと呼ばれるような作品が世代を超えて愛されており、当時初々しいお姫様を演じた女優も今ではベテラン女優になっていたりする。何度見ても飽きず、心温まる、そんなおとぎ話映画がたくさん見られるのもチェコのクリスマスの楽しみの一つである。

12月のプラハの劇場に目を向けてみたいと思う。プラハは百塔の街と言われるが、劇場の数も大変多い。オペラ、バレエ、演劇などいつでも気軽に楽しむことができるのはプラハ生活の魅力でもある。そんなプラハの劇場の中で最も美しい外観と内装を持つ(と私は思う)ヴルタヴァ川沿いに建つ国民劇場では、12月になると楽しみな演目がある。それはクリスマスバージョンのくるみ割り人形(バレエ)だ。今年は12月3日を皮切りに、25日、31日、1月1日を含み、2月まで十数回に渡る公演が予定されている。この時期しか見ることが出来ないとあって、チケットは早々に売り切れてしまうことも多いのだが、おめかしして訪れる子供たちをも惹きつけてやまない演目である。さらに国民劇場では例年、アドベント・サンデーから日曜日ごとに4回のアドベント・コンサートも開かれる。チェコの伝統的なクリスマスキャロルやクリスマス・ミサ曲が美しく響く、素敵なコンサートだ。この時期にプラハを訪れる方はこの歴史的建造物を外から眺めるだけでなく、是非一歩足を踏み入れ、クリスマスの雰囲気をこんな風に味わってみるというのはいかがだろうか。

プラハの大晦日はどこも賑やかだ。街の広場はカウントダウンをしようという人でいっぱいになり、普段なら5分で歩けるところが40分もかかったりする。そんな熱気の中、チェコ人、そして観光客を含む世界各国からの人々と新年おめでとうの声を掛け合っていると、言葉の壁も文化の違いも飛び越えた、平和な気持ちになるのである。

こんな12月が今年もやってきた。ライトアップされた夕刻のクリスマスマーケット。ホットワインの湯気と白い息。寒さの中に灯る暖かさ。クリスマスを待ちきれない人々の顔には笑顔がある。R